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会長挨拶


会 長 古 谷 誠 章

『パンデミックを通して、これからの社会を考える』


新年明けましておめでとうございます。
昨年は丸3年ぶりに日本建築士会連合会の全国大会が秋田で開催され、再会を喜び合うことができましたが、いまだに感染が終息したとは言えず、再び拡大する可能性もある中で、また新しい年を迎えることとなりました。そんな中で私たちは確実にこれからの社会のあり方を模索し、建築士としてそれを支えるこれからの建築や都市についての思考をめぐらせねばなりません。必ずやそれが人々の幸福な暮らしを取り戻すことにつながると信じています。
一方では、すでにそれ以前からの課題である、脱炭素社会の構築に向けての取り組みや、人々の命と暮らしを守るまちづくり・都市づくりなど、引き続き推し進めていかねばならない課題も依然として横たわっています。私たちの生活環境の基盤を支える建築士の役割は以前にも増して重要なものとなっています。さらにパンデミックを経験した今、これまではなかなか実現や定着が難しいと思われた、リモートワークや二拠点居住など、人々の新たな生活のスタイルが現実のものとなり、これに向けての建築のアイディアもまた必要とされてきました。しかしこれらは頭の痛いものというよりは、楽しく明るいものとして思い描くことができます。あわせて地方における過疎化や高齢化対策などにも有効な方策を生み出すことにもつながります。
本年は、徐々に取り戻しつつある、連合会レベルでの全国交流、関東ブロックにおける交流に加えて、首都圏の建築士会が手を携えて取り組む大都市特有の問題や、首都圏直下型地震を始めとする大都市圏の災害に対する備えや、SDGsやサステイナブル都市化の推進などをめぐる活動を、さらに活発化して行きたいと思います。さらには建築士制度や資格試験の問題、優れた建築人を育成する建築教育の問題、建築士職能の国際化などに対しては、建築士会の枠を超えて、日本建築家協会、東京都建築士事務所協会と協調して問題を共有する土俵づくりを行い、さまざまな議論を活発化してきたいと考えています。
昨年の全国大会に東京建築士会の会長として参加して、改めて実感したことがあります。すなわち建築士会が、官公庁や大小民間会社、さらに多様な個人が会員として参加するものでありながら、全国の都道府県の建築士会が対等に連携する大きな広がりのある組織であるために、会員同士がその広がりの中で地域や世代を超えて縦横無尽に交流、連携、協働のできる素晴らしいポテンシャルを持っているということです。旧知の会員同士が、そしてまた新たに出会った会員が交流を楽しむ無数の笑顔がそれを雄弁に物語っていました。交通と情報交換をサポートする技術は確実に向上しています。そうした中で今年もまた時にオンラインで、時にオフラインで一堂に会する活発な会員交流が実現できることを心より祈念しています。ぜひ度々お会いしましょう。

令和5年1月
東京建築士会 会長 古谷 誠章


[ 略 歴 ]

1955年 東京生まれ/1980年 早稲田大学大学院理工学研究科修了/1980~1986年 早稲田大学理工学部助手/1986~1994年 近畿大学工学部講師/1994年 早稲田大学理工学部(現創造理工学部)助教授、NASCA設立/1997年~ 同教授

[ 教 職 ]

上記の他、日本女子大学、北海道大学、東京工業大学、東北大学他で非常勤講師、韓国慶熙大学校建築専門大学院招聘教授、中国湖南大学客座教授、中国昆明理工大学客座教授、中国青島理工大学顧問教授他

[ 主な著書 ]

「マリオボッタ 構想と構築」(訳)、「Shuffled 古谷誠章の建築ノート」、「がらんどう」、「僕らはこうして建築家になった」、「マドの思想」、「モダニズムの地平 12 組 13 人の建築家との対話」、「建築家っておもしろい」、「NOBUAKI FURUYA 179 WORKS」

[ 受賞歴 ]

1991 年 第8回吉岡賞「狐ヶ城の家」/1999 年 日本建築家協会新人賞「詩とメルヘン絵本館」/2007 年 日本建築学会賞(作品)、日本建築家協会賞、BCS 賞「茅野市民館」/2011 年 日本藝術院賞「茅野市民館」/2012 年 日本図書館協会建築賞・ AACA 賞「小布施町立図書館まちとしょテラソ」/2012 年 BELCA 賞「早稲田大学會津八一記念博物館(改修)」/2014 年 日本建築大賞「実践学園中学・高等学校自由学習館」/2015 年 日本建築学会賞(業績)「『失われた街』模型復元プロジェクト」/2016 年 BCS 賞「日清食品グローバル・イノベーション・センター the WAVE」/2017 年 福島建築文化賞準賞「喜多方市新本庁舎」/2017 年 千葉県建築文化賞「鋸南町都市交流施設・道の駅保田小学校」/2017 年 中部建築賞「静岡理工科大学建築学科棟えんつりー」/2018 年 高知県木の文化賞「宿毛まちのえき林邸」/2000~2017 年 日本建築学会作品選奨(計 11 作品)

[ 団体関係 ]

2001 年~現在  UNESCO-UIA(国際建築家連合)・ 建築教育認定評議会第Ⅳ地域代表副議長/2004 年~現在  UIA(国際建築家連合)・ Education Commission 委員/2005~2006 年 ARCASIA(アジア地域建築家協議会)副議長/2005~2007 年 日本建築家協会副会長/2005~2011 年 UIA2011 東京大会日本組織委員会学術部会長/2008~2011 年 UIA2011 東京大会(第 24 回世界建築会議)・ UIA Scientific Committee 議長/2013~2015 年 日本建築学会副会長/2016~2018 年 日本建築士会連合会学術理事/2017~2019 年 日本建築学会第 55 代会長

[ 主な作品 ]

「香北町立やなせたかし記念館」、「早稲田大学會津八一記念博物館(改修)」、「ジグハウス/ザグハウス」、「近藤内科病院」、「茅野市民館」、「高崎市立桜山小学校」、「熊本市医師会館・看護専門学校」、「小布施町立図書館まちとしょテラソ」、「実践学園中学・高等学校自由学習館」、「山鹿市立鹿北小学校」、「喜多方市新本庁舎」、「T 博士の家」、「静岡理工科大学建築学科棟」、「沼田町暮らしの安心センター」、「阿久根市民交流センター 風テラスあくね」他