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古谷 誠章Nobuaki Furuya
東京建築士会会長
オイルショック直後の1974年に僕が早稲田大学に入学した時の新入生ガイダンスでの、吉阪先生との初めての出会いはとても強烈なものでした。「君たちが卒業する頃、建築の仕事はビルのひび割れ直しぐらいしかないだろう。卒業設計で学年10位以内に入るといい建築家にはなれないよ」と、入学したての僕たちの頭を相当混乱させてくれました。また5月にはオリエンテーションが今回の会場となる大学生セミナーハウスで行われ、逆さピラミッドの本館最上階での学年全員の食事会、二人ずつ泊まるユニットでの宿泊体験など、文字通り吉阪先生の洗礼を受けたような、学生生活の始まりでした。吉阪先生のエピソードは数あまたありますが、いずれも謎解きの禅問答のようなもので、いまだに時々答えを思いつくような長持ちのする問いかけが多かったです。真に多様な価値観を尊ぶ自由人だったと思います。今のセミナーハウスには1群だけしか残っていないのが本当に残念ですが、斜面を一切造成せずに建てた7つの宿泊ユニット群とセミナールームは、200人が一堂に会する本館と、対照的な2人(本当は個室にしたかったそうです)部屋の最小単位まで、さまざまな人の集合を想定したものです。人々が出会う場所としてこれ以上ふさわしいものはないと思います。「東京空間万博」と題された関ブロ青年東京大会、多くの皆さんが集まって、是非未来につながる建築の話をしようではありませんか。