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【本 会】法規メルマガ7月号:小田圭吾法規委員長の法規コラムを掲載しました。

2018年07月20日

【東京建築士会・法規委員長・小田圭吾の辛くち法規チェック】
当会が配信しているメールマガジン「法規メルマガ7月号」(7/20配信分)の法規コラムを掲載いたします。

■西日本記録的豪雨
6月末の台風7号の通過後7月6日から8日にかけて福岡から広島、愛媛、岡山、山口を中心に岐阜まで200名超が死亡するという記録的豪雨による災害が起こりました。犠牲者の方に心からお悔やみ申し上げます。昨年の福岡県と大分県を中心とする九州北部豪雨と時期や原因も同じで、梅雨明け直前の線状降水帯(次々と発生する発達した雨雲(積乱雲)が列をなした、組織化した積乱雲群によって、数時間にわたってほぼ同じ場所を通過または停滞することで作り出される、線状に伸びる長さ50~300km程度、幅20~50km程度の強い降水をともなう雨域)が原因です。九州北部では平成24年7月にも同様の豪雨があり、福岡で72時間雨量が646ミリ、死者合計30名を記録しています。平成29年7月豪雨は福岡で72時間雨量が616ミリ、死者合計40名であり、今回の西日本記録的豪雨では、降り始めから9日午前5時までの雨量は、高知県馬路村で1846ミリ、本山町で1695ミリ、岐阜県郡上市で1058ミリなど1000ミリを超える地点も出たほか、福岡県添田町で541ミリ、愛媛県鬼北町で876ミリ、広島県呉市で498ミリ、岡山県鏡野町で460ミリを観測しました。8日までの3日間に降った雨は93地点で観測史上1位を更新するなど、各地で記録的大雨となりました。明らかに被害が拡大傾向にあります。

線状降水帯の原因は主に二酸化炭素の増加に伴う地球温暖化と言われており、海水面の温度上昇による積乱雲の増加と推測され、この傾向は止まる気配はありません。建築関連法規をみても、雨水に対する法規制は建築基準法では第19条(敷地の衛生及び安全)第1項で地盤面を道路より高くすること、第2項で出水のおそれの多い土地の地盤改良、第3項で敷地の雨水及び汚水の排水施設、第4項で建築物ががけ崩れ等による被害を受けるおそれのある場合に擁壁の設置その他安全上適当な措置を求めていますが具体的な技術的基準(雪や風速についての基準は構造に影響するため有)はありません。建築基準法は建築物の敷地、構造、設備及び用途に関する最低の基準を定めて規制しているため、洪水やがけ崩れに対する対応には限界があります。

がけ崩れに対しては昭和36年宅地造成等規制法、昭和44年急傾斜地崩壊災害防止法がありますが、区域指定がなければ効果がありませんし、72時間雨量で1000ミリ以上に対応できるかどうか不明です。降雨実績に応じた基準の強化を検討する必要があるかもしれません。また、河川の氾濫という町全体が冠水して死傷者が出る災害に対して、こういった規制はほぼ無力と言わざるを得ません。建築物内や流された自動車内での溺死などは想定外の災害となってしまいます。増加する降雨量に対する治水対策が必要なのだと思います。また、宅地造成等規制法などの区域指定対象外では、山裾などでの土砂崩れ対策も同様に必要となります。洪水やがけ崩れを前提に調査を進めると、建築物の敷地として不適格となる敷地も増加してしまうことでしょう。建築士として建築物の設計計画時点での調査と注意も重要となります。

全ての原因と思われる地球温暖化は、産業革命以降先進国が化石燃料を膨大に燃焼させて二酸化炭素を排出してきた結果であり、発展途上国に安価な化石燃料を燃やさないように要請するだけでは解決しません。再生可能エネルギーの発電量を世界的に拡大し、余剰エネルギーで二酸化炭素を分解して炭素を固着させるまで解決しないのかも知れません。放射能の危険性がある原子力発電に代わる核融合炉による発電が実現すれば解決は早まるのかもしれませんが、短時間での解決は望み薄です。建築士としてはゼロカーボンとなるように省エネ設計を目指し、少しでも地球の異常気象を止める努力をすべきだと感じます。また、政策的に今回のような豪雨に対する治水対策を実施することや傾斜地のがけ崩れを防止する対策を実施し、大量降雨に対して安全なまちづくりを促進すべきでしょう。

民間の投資では不可能な対策については、行政による一部助成などについても検討して良いのではないでしょうか。対策不能の場合には一部の敷地を建築禁止とするなどの施策も必要となるかもしれません。もっともこう言った私権を制限する法規制は難しいとは思いますが検討には値します。また、政策による投資額と救済される土地の価値とを比較した場合、投資不能な土地もあると思いますが、是非とも投資効果の大きい治水等の対策から優先的に実施される事を願ってやみません。人類の力は自然災害に対しては無力ですが、最善の対策を選択することはできます。

西日本にはかなりの確率で毎年梅雨明けに豪雨が発生していますが、徐々に線状降水帯は東に推移し、今回の西日本記録的豪雨では岐阜にまで及んできています。今後関東平野を含む東日本でも過去に例のない豪雨の可能性もありますので、設計にあたっては考えられる対策を建築物単位においても配慮していく必要があります。土砂崩れに対して崩れる方向の開口部を減らしたり、一階冠水に対しては地下室の設計も含めて、階段以外でも上階に避難可能とするなど建築士としてのアイデアを設計に反映していくことが望まれるでしょう。天災は予測される状態となると人災となります。今回の記録的豪雨を経て、豪雨対策に注意を払って設計していく必要を強く感じました。

【各府県別死者数】
(7月17日現在、警察庁発表)
岐阜:1名
滋賀:1名
京都:5名
兵庫:2名
鳥取:1名
岡山:61名
広島:111名
山口:3名
愛媛:26名
高知:3名
福岡:3名
佐賀:2名
宮崎:1名
鹿児島:2名
合計 222名
※今後変わることがあります。

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