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【本 会】法規メルマガ6月号:小田圭吾法規委員長の法規コラムを掲載しました。

2018年06月13日

【東京建築士会・法規委員長・小田圭吾の辛くち法規チェック】
当会が配信しているメールマガジン「法規メルマガ6月号」(6/13配信分)の法規コラムを掲載いたします。

■建築士法改正動向
自民党の建築設計議員連盟は6月5日に同党で開催された総会で、日本建築士事務所協会連合会、日本建築士会連合会、日本建築家協会の設計三会の共同提案を受け、今後ワーキングチームを作り精査のうえ議員立法による改正作業を進めると発表しました。設計三会の提案主旨は建築士の高齢化に伴い若手建築士の確保育成の必要性と受験者減少の分析・対応や建築士の活躍範囲を建築設計、施工及び維持管理まで拡大が必要としています。

提案内容は大きく2つに分かれ、一つ目は建築士資格制度改正に関しての要望で、4項目あります。1項目は受験時要件である実務経験を建築士登録時と改め、一級建築士に関しては大学卒業後直ちに受験できることとし、合格後に実務経験を積んだ後に登録できる制度に改めること。2項目は実務経験の範囲拡大です。平成20年11月改正でかなり実務対象が狭められたものを、基本計画や既存建築物の品質調査・検査および維持保全業務、大学や工業高校等での建築教育、官公庁等における建築行政などの復活を求めています。残念ながら工事施工での前回削除された建築一式工事以外の工事施工管理は例示されていません。3項目は製図試験の受験要件で学科試験合格後三回まで可としているものを、学科試験合格者は一定の知識・能力を身につけていることから回数制限を撤廃することを求めています。4項目は試験内容の改善で、大学等の建築教育との整合性やCADによる製図試験の導入検討などを提案しています。

二つ目は建築士の業務領域等に関しての要望です。建築士の減少の最大の原因は建築施工段階の生産現場の監理技術者(建設業法)の資格者が昭和58年の建設業法改正により一級建築士に加えて取得が易しい一級建築施工管理技士が追加されたことにあります。建設会社で工事課長となるためには一級建築士を取得しなければならなかったベビーブームの時代はとうに過ぎ去り、一級建築士資格を取らず一級建築施工管理技士のみの建築基準法関連法規も定かではない工事現場責任者が、多くの品質トラブルを起こしているのが昨今の実態です。これらは建設業法を改正して大規模建築物の監理技術者の資格要件に一級建築士を併設しない限り改善しないでしょう。もう一つの原因は建築士法第3条の設計資格要件が新築に偏り、戦後の建築ラッシュをとうに過ぎた成熟社会でのストック活用に一級建築士を活用する資格要件が記載されていないことです。アメリカでは1970年代に新築の工事高に改修の工事高が追い付いたと言われていますが、日本においては容積率の規制変動により安定しなかったという事情があるとしても、今後ストック建築物の工事が増加していくことは、資源節約や温暖化対策として想定されます。ストック建築物への建築士の関与は社会制度としての定着よりも、消費者保護の観点からも法規制すべきものとして捉えられなくてはなりません。

要望1項目は「大規模の修繕」や「大規模の模様替え」に該当しないストック建築物の改修に係る設計・工事監理と、耐震診断の建築士が行うことの推進としています。建築基準法改正で特殊建築物100㎡超から200㎡超に緩和される用途変更設計の資格要件化などには触れていません。また、この「改修」に何が含まれるのかは明記されていません。「改修」(リノベーション)とは狭義には性能・機能を向上させる「改良」(インプルーブ)と修理や更新を行う「修繕」(リペア)の両者を含むものといわれ、リノベーションと比べ規模や改良度の少ない和製英語のリフォーム(改革や変革の意味)と近い意味となります。これ以外に類似語では「改造」(コンバージョン)、模様替えや再設にあたる「改装」(リモデリング)、歴史的建物などでの「再成形」(リモールディング)、「用途変更」(アプリケーションチェンジ)が有りますが、広義に捉えれば全て「改修」に含まれるかもしれません。どこまでを法令により資格要件化すべきかが重要な論点となります。用途変更確認申請などは建築士法第3条に準用規定として追加するだけで簡単に制度化できますが、既得権との調整も必要かもしれません。余談ですが上記の改修類似語に「再生」(リファイニング)も有りますが和製英語と思われます。また、アメリカの雑誌などでは1970年代から「改修」ではなく「更新」(リニューアル)が総称として使われてきたのではないかと思います。日本は戦災などの関係でストックビジネスに関してはアメリカの50年遅れとなっているようです。

要望2項目は建築士の実態把握と活動にかかる資質確保として、定期講習の内容やCPD制度の活用検討に触れています。建築士の資質向上も重要なのですが、法定の資格要件が定められない状況ではどの程度効果があるのかは分かりません。日本の建築生産ならびに維持保全の観点からも建築士法の規制内容を実態に合わせていく努力が必要と考えます。また、違法建築物を増加させないための社会的な制度も設計業界から提案していく必要もあるのではないでしょうか。建築物所有者にとって資産評価に影響が出ないようにするための改修工事などでの内装監理を一級建築士に依頼する慣習を社会制度化していくことが、ストック建築物が主流となる成熟社会においては必要なのではないでしょうか。今回の建築士法改正ではこれらの観点も含めて議論され法規制として何を規制し、社会制度として何を推進すべきかを明らかにしていくべきだと思います。

参考資料
>1.建築士資格制度の改善に関する共同提案〔(公社)日本建築士会連合会/(一社)日本建築士事務所協会連合会/(公社)日本建築家協会〕
>2.(公財)建築技術教育普及センター実務経験に該当する例(新旧対照表)

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