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【本 会】法規メルマガ5月号:小田圭吾法規委員長の法規コラムを掲載しました。

2018年05月15日

【東京建築士会・法規委員長・小田圭吾の辛くち法規チェック】
当会が配信しているメールマガジン「法規メルマガ5月号」(5/15配信分)の法規コラムを掲載いたします。

法制度と社会制度
法制度は社会制度の一部であり、必要最小限の規律を制度化したものと言われ、法制度以外の社会制度の大半は、その社会の多様な規範の存在を容認しつつ、全体として規律をもたらしているものとされています。法制度は人間がもつ様々な個人的な欲望や必要を充足する社会の機構とそれらに付随する社会的規範から見ると最低限のルールということになります。法制度以外の社会制度は一般的には歴史的に醸成された慣習に基づく社会的規範ということでしょうか。行動様式の集成が文化と呼ばれ、親から子へ、先輩から後輩へと系統発生的に定着したもののうち、ルール化したものが社会制度です。建築基準法の策定にあたってはこの精神を汲んで最低の基準を定め、その余は設計する建築士に委ねる法制度だったと思います。法律に定めの無いものでも建築学会や法定団体などが定めたものも社会制度として機能してきたと思います。平成18年の構造計算書偽装事件による建築確認制度の厳格化に伴いこの精神はかなり歪められたと感じます。

4月号で解説した平成30年の建築基準法改正は、この法制度のうち建築確認制度に対する緩和を二点含んでいます。先ず法第87条(用途の変更に対するこの法律の準用)の確認申請が必要な用途変更を特殊建築物の100㎡超から200㎡超に緩和したことにより、現状で申請されている用途変更確認申請の8割くらいが申請不要となります。特に物販店舗以外の飲食店舗等は200㎡以下が大半ですので深刻です。建築士であっても申請が不要であれば法規制を遵守しなくとも良いと勘違いしている人もいるくらいですから、ストック建築物の遵法状況に多大な影響を与えてしまう可能性も有ります。慣習や社会制度として、確認申請が不要の用途変更にどれだけ建築士が関与し法適合確認をしているのかが重要です。

不動産証券化に伴う投資対象の収益物件の場合は、金融庁の指導も有り遵法運営が強く求められているため、ストック建築物であっても入居工事に際しては内装監理制度といった形での法適合確認を義務化しているケースも増えてきています。内装監理費用の負担者は入居テナントとなることが一般的です。この結果交付される内装監理報告書は法第12条第1項の特定建築物定期調査報告の一部として定期的に把握される形になります。この定期調査報告は、一級建築士若しくは二級建築士又は大臣認定等の建築物調査員が行うこととなっていますが、建築物調査員のレベルでは大規模建築物の法適合確認を実施させるのには無理があります。例えば排煙規定などで階避難検証法を用いたものなどは検証不能と思われます。事務所ビルなどの会議室や飲食店舗などの間仕切りの多いものは難しいと考えられますので、建築士事務所が調査業務の一つとして内装監理業務を受託することが望ましいと思われます。建物管理会社が受託している特定建築物定期調査だけでは限界があります。

不動産証券化は配当を法人税課税から除外する平成12年の税制改正により始まり、投資家保護として金融庁の監督で遵法運営義務が厳格化されてきていて、最近は入居工事に内装監理を義務付けする傾向が出てきたところです。一般の物件では建物管理会社を含む内装工事業者が違法に工事するケースも多く、ストック建築物の遵法維持に問題を生じているところなので、慣習や社会制度化しているとはとても言えない状態です。片や、平成19年改正の不動産鑑定基準では鑑定にあたってエンジニアリングレポートの参照を義務付けていて、その中でも遵法チェックの内容は遵法化必要費用低減として、価格に大きな影響を与える仕組みとなっていますので、不動産所有者に内装監理の重要性を理解していただくことは不動産価値を下げないという意味で、可能性が高いものとなってきています。設計事務所の営業が必要なのではと感じます。法改正は1年以内施行ですので、設計業界としては内装監理制度のガイドラインやパンフレットなどを作成し、社会制度化する必要があるのではないかと思います。

続いて、法第6条第1項第1号の特殊建築物かつ100㎡超200㎡以下は、改正後は4号建築物となり、法第6条の4(建築物の建築に関する確認の特例)と施行令第10条第3項と第4項により一戸建て住宅とそれ以外について分けて建築主事等の審査対象条文が緩和されている特例対象建築物となります。こういった法制度の対象から外れる部分については設計者に委ねられていることとなります。設計料が安い小規模建築物では、審査対象ではない部分で違反設計が起きてしまうことを防がなければなりません。
因みに平成30年4月3日付公表の一級建築士の懲戒処分は、11件中9件が施行令第46条第4項(木造の壁又は筋かいなど軸組)違反3件業務停止5ヶ月・4ヶ月、施行令第47条第1項(継手又は仕口)違反6件業務停止14日となっています。これらは4号建築物と思われ、施行令10条(建築物の建築に関する確認の特例)による特例審査対象外条文に含まれず、建築主事等による審査対象である法第36条に対応する施行令違反と考えられます。建築士の倫理観だけに頼るのではなく、4号建築物に対する審査対象外を含む法令チェックシートなどを用意して遵法化を図る制度を設計業界として慣習化する必要があるのではと感じます。

最後に前段の用途変更や同用途の入居工事の設計に関しては、法第6条による建築確認申請の要不要にかかわらず、設計する建築士の資格要件が建築士法に定められていないことは、消費者保護の観点からも最低限の規制にそぐわないと思います。大規模建築物の入居工事を、建築基準法関連法規を知らないものが設計・施工することは社会的規範に合うとは到底思えません。建築基準法の法制度の緩和は社会制度でも対応可能かもしれませんが、今回の建築基準法緩和改正に応答して建築士法第3条の資格要件は、新築ならびに増改築・大規模の修繕・大規模の模様替だけではなく、用途変更や同用途でも間仕切り変更等の入居工事や耐震改修工事に関して記載することが、これからのストック建築物にとって最低限必要な規制だと思います。皆さんは如何お考えでしょうか。

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