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【本 会】法規メルマガ3月号:小田圭吾法規委員長の法規コラムを掲載しました。

2018年03月14日

【東京建築士会・法規委員長・小田圭吾の辛くち法規チェック】
当会が配信しているメールマガジン「法規メルマガ3月号」(3/14配信分)の法規コラムを掲載いたします。

民泊新法(住宅宿泊事業法)の進展
東京都産業労働局は平成30年2月19日付で「東京都における住宅宿泊事業の実施運営に関するガイドライン」を発表しました。目的は東京都の住宅宿泊事業等関係行政事務所管区域における住宅宿泊事業の振興及び適正な実施運営を確保し、旅行者の宿泊需要に的確に対応することとなっています。主な内容は、事業を営もうとする者に対する事前準備の指導、各種届出、事業者の業務に関する指導、監督、関係機関(警察・消防・保健所等)との連携となっています。なお、東京都の住宅宿泊事業等関係行政事務所管区域とは、特別区および保健所設置市を除く市町村区域と定義されているため、区域外に関してはそれぞれ個別に定めるものとされています。

この制度は東京などの大都市都心部においては、従来よりヤミ民泊による苦情が寄せられていたことと、平成32年(2020年)のオリンピック・パラリンピックに向けて外国人旅行者の宿泊需要に的確に対応するという矛盾を解決すべく、旅館業法のフロント設置義務などの緩和ならびに罰則強化(罰金3万円から100万円)とともに平成29年6月住宅宿泊事業法として公布(平成30年6月15日施行)され創設されたものです。特別区の中でも条例に基づくルールを公表する動きが出てきています。東京都のガイドラインと設置基準などは同等と見えますが、営業日数については住宅宿泊事業法の営業日数180日以内に対して、中央区は区内全域で平日禁止、新宿区は住居専用地域では月曜日の正午から金曜日の正午まで住宅宿泊事業を実施不可(約154日)などとしています。全国的には京都市の住居専用地域では閑散期の1~2月のみ60日や兵庫県の住居専用地域では0日など住居専用地域は全般的に規制強化している行政庁が多いという印象です。政府の政策意思とは違った傾向に向かっているようにも感じます。

中央区や港区はタワーマンションを中心にヤミ民泊が特に多いと思われますので、この民泊新法の届出受理や旅館業法の簡易宿所(建築基準法では「ホテル又は旅館」)許可をとれず、住宅として賃貸又はSOHO事務所として賃貸が出来ない場合は、投資家(特に中国人が多い)としては売却しか選択肢がないということも考えられます。ただ、タワーマンションに関しては31m超の高層部分には自火報の感知器など設置済みで、防煙カーテン程度であれば許可の支障は少なく、加えてフロントの設置義務が緩和されているため、簡易宿所としての着地点は管理規約が禁止していない場合は見いだせるのかもしれません。低層部分や31m以下の中高層マンションでは厳しくなることが予想されますので今後の動静は分譲マンションの分譲価格に大きく影響を与えるのではと思います。既に住宅宿泊事業法公布により多少下げ始めている場所も有ると聞いています。

住宅宿泊事業法の届出受理は住宅や共同住宅の用途のままですが、旅館業法の簡易宿所許可を取ると、建築基準法では用途は「共同住宅」から「ホテル又は旅館」に変更となります。現行法でも法第87条(用途変更準用)で特殊建築物100㎡超の場合(本年の改正で200㎡に緩和予定)に建築確認申請が義務付けられていますが100㎡超のマンション(改正後の200㎡超)はほとんどありませんので手続的には問題なく、変更の実態も建築基準法としては不明となります。また、消防法でも複合用途防火対象物の従属用途の規定は延床面積の10%未満300㎡未満しか認められていないため、戸数が増えると防火対象物16項イとなり建物全体での規制が強化されますが、行政間連携で把握できても工事費負担等の問題が出てきます。建築基準法でこれらを管理するための規定があるとするなら、法第12条第1項特定建築物定期報告制度ですが、国の指定(施行令と告示)から共同住宅は除外されています。東京都は特定行政庁指定としているため定期報告として3年毎に報告が上がる仕組みですが、建築士が調査者(国の指定した建築物調査員が多い)である比率もそれほど高くなく、専有部は対象から除外されているため実効性は定かではありません。こういった意味でも大規模建築物のストック活用は建築士の関与が望ましいのですが、用途変更確認申請の対象が緩和されたりして、ますます関与しにくくなるような気がします。別の内装監理などの制度が必要なのではと感じます。

地方税も建物の登記用途で課税しているため問題ないかもしれませんが、土地の固定資産税・都市計画税が非住宅用途の約1/5に減免されているため、簡易宿所が増えた場合の不公平感はぬぐえません。最もSOHO事務所も同じことです。これと類似しているものとして、学生寮や単身赴任寮についても昨今のホテル不足による収益力の差が原因で、旅館業法の許可を取る事例が増加し始めています。「寄宿舎」から「ホテル又は旅館」への用途変更は利便性の高い場所は特に増加していきます。小生も20年程度前に学生寮や単身赴任寮を運営する不動産会社に賃貸した駅近物件の設計で、寄宿舎とほとんど同様の設計(採光規定不要)でホテル用途とした経験もありますが、当時と比べてホテルの稼働率や客単価は明らかに上昇しているのが実態で、寄宿舎の料金はあまり変わっていません。用途変更しても登記用途を変えない場合は地方税の課税は増えませんが、この手の寄宿舎の規模は2000㎡を超えるものが中心となりますので、建築士の業務として依頼されるケースが増えると思われます。しかしながら、再三このコラムで記載しましたとおり、建築士法第3条の資格要件に用途変更確認申請は含まれませんので、内装工事業者などが設計業務について無資格で申請するケースもあると思わねばなりません。専用住宅や共同住宅ならびに学生寮や単身赴任寮の市場原理によるホテルや民泊への用途変更に対して、より良いまちづくりのためにどのようにすれば良いかを真剣に考えなくてはと思うところです。

参考資料
>1.新宿区HP
>2.中央区(案)HP
>3.Airstairの特別区動静HP

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