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法規メルマガ7月号:小田圭吾法規委員長の法規コラムを掲載しました。

2017年07月12日

【東京建築士会・法規委員長・小田圭吾の辛くち法規チェック】
当会が配信しているメールマガジン「法規メルマガ7月号」(7/12配信分)の法規コラムを掲載いたします。

ヘリテージと建築基準法
建築基準法でヘリテージ建築物に関する条文は、法第3条(適用の除外)第1項第1号から第4号に「保存建築物」として文化財保護法の指定建築物、旧重要美術品等の保存に関する法律の認定建築物、文化財保護法第182条第2項の条例等で現状変更の規制及び保存のための措置が講じられている建築物の三種類と第1号、第2号に掲げる建築物又は保存建築物であったものの再現建築物で、特定行政庁が建築審査会の同意を得て指定したものは建築基準法の適用除外とするという制度の他、平成16年法第85条の3「伝統的建造物群保存地区内の制限の緩和」ならびに平成20年11月新設の法第2条27号と施行令第136条の2の5第1項第1号ニに定める「歴史的風致維持向上地区計画」の制度などが有りますがどちらも文化遺産として古い建築物等が対象となります。都市再開発法関係では平成元年建設省住街発第67号歴史的建築物等活用型再開発事業実施要領なども出ていますが同様の対象と推測されます。

遺産としてのヘリテージとレガシーの違いはヘリテージが文化的遺産でレガシーが財産的遺産とも言われています。ヘリテージの価値は古いほど貴重という考え方から最近では割と新しいものまで対象と考えるようになってきています。そもそも都市にヘリテージ建築物がなぜ必要かという議論は長きにわたり欧州や日本でもなされてきましたが、日本は先進的だとする考え方も欧米にはあります。特に寺院建築物は税制などからも優遇され維持が継続されてきました。しかしながらどのような価値基準で保存してきたのかは明快な理論は無いのかも知れません。

小生は都市や建築物という人間を取り巻く物理的環境は、人間の欲望とその解決の関係で分析すべきという考え方をしてきました。利用者の満足度の総和が高いほどより良い環境という視点で価値を測る方法です。こうした考え方からすると、ヘリテージは人間の存在証明を建築物等との関係で感じたいという欲求のために有効だということとなります。建築物の時間の継続性が自分の存在感を高めてくれる価値があるということです。これらの欲求と世代を超えた行動様式である文化は時代を経るごとに変化していくことにも着目し分析しなければなりません。古ければ古いほど価値が高いという「歴史的」や「文化財」といった考え方から、自分たちが子供のころに見た風景でやや古いものへの価値移転もこうした考え方からはあり得ます。結局現在生活している人間の満足の総和が都市環境の優劣を決めていくこととなるのです。

さてここで、古い建築物が無くなって行くメカニズムについて考えてみましょう。建築基準法と都市計画法による用途地域制限や容積率制限と形態規制ならびに土地保有税制や相続税制は建築士の能力や意見をはるかにしのぐ強力なパワーを持っています。例えば丸の内周辺の容積率が、平成16年に1000%から1300%に変更となっただけで、まだ使用可能な高層建築物がたった15年でほとんど超高層に建て替わってしまいます。逆に容積率が厳しくなった絶対高度31m時代の建築物は耐震改修を実施し、外壁改修や設備更新を施してストック建築物を有効活用することとなります。また住宅地でも他の用途での賃料が上がり、収益価格が上がると土地保有課税が強化され、相続税制も相まって住宅を維持できなくなり、他用途化してしまうという事象も東京都では起きています。東京都では容積率制度を導入した昭和48年から、一度容積率が規制された後、平成元年、平成8年、平成16年とずっと緩和が続いています。容積率を一定以上緩和すると建替え圧力が強くなることは明らかです。

ヘリテージ建築物の保存や一部を残して再建築するなどの施策は、こうした容積率変動による建替え圧力を切り抜ける制度が必要となります。建築基準法第86条一団地認定や地区計画による容積移転は有効ですが、50年以内程度のヘリテージ建築物をまちづくりとして計画していくにはもっと極め細かな容積移転制度が必要なのではないかと思います。実効性をあげるためにはヘリテージマネージャーの養成とともに法制度といった武器も必要です。このような制度提案も建築士会法規委員会として検討しなければならないと考えているところです。皆さんのご意見はどうでしょうか。

参考資料
>建築基準法第3条第1項第3号の規定の運用等について(技術的助言)(国交省HP/PDF)

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