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法規メルマガ4月号:小田圭吾法規委員長の法規コラムを掲載しました。

2017年04月20日

【東京建築士会・法規委員長・小田圭吾の辛くち法規チェック】
当会が配信しているメールマガジン「法規メルマガ4月号」(4/20配信分)の法規コラムを掲載いたします。

建築物の大規模修繕
「大規模修繕」という言葉は一般的には建築物の長期修繕計画のうち10年以上の間隔で実施される修繕の大規模なものを総称しています。建築関連法規に詳しい人は、若干違和感があるかも知れません。建築基準法には第2条(用語の定義)に「大規模の修繕」と「大規模の模様替」が有り、それぞれ主要構造部の一種以上について行う過半の修繕や模様替と定義されているからです。間に「の」が入るものの、慣習として「大規模修繕」「大規模模様替」という用語で使われてきている実態が有ります。これに該当した場合は第6条により建築確認申請義務が発生したり、建築士法の第3条第2項により設計又は工事監理について建築士の資格要件が定められたりしています。しかし、一般的な長期修繕計画の大規模修繕などに、必ずしも建築士は関与してきていません。新築に偏り過ぎてきたのではと思います。
また、大規模修繕は2回目以降になると、当初設計の基準では不足となるものも多く、例えば耐震改修や、開口部や屋根・外壁といった外皮の省エネ改修を併せて実施することが必要となってきます。建築士の資格要件はこういった設計については、建築士法では定められていませんが、専門家として相談されるケースは増えてきます。マンションの大規模修繕で考えてみると、分譲会社の子会社のマンション管理会社が長期修繕計画を立て、当初設定された修繕積立金を使ってろくな調査もせずに、計画にあるからとして必要のない時期に修繕してしまうといったことが当初数多く起こりました。マンション管理会社は改修工事の元請けをすることによって利益が得られるという構図です。ひどすぎた場合は管理組合からマンション管理会社が解約されました。建築士等の専門家による調査はぜひとも必要なのですが、あまり認識されていないのかも知れません。
現状でも、この問題は解決していません。建築基準法第8条(維持保全)には、分譲マンションの昭和40年代からの激増を受けて、昭和60年施行で第2項が設けられ、所有者や管理者に「建築物の維持保全に関する準則又は計画」の策定義務が記載され、必要な指針として大臣告示の昭和60年3月19日建設省告示第606号が示され、現在でも有効です。この中には計画で定めるべき事項として10項目あり、第2号維持保全の実施体制には、建築士その他専門技術者の関与等に関する事項との記載があります。また、第7号には設計図書等の保管、第8号には資金計画や保険についても記載されています。この告示以外の行政指導も数多く有ったと思います。建築基準法ではこれに加えて、第12条(報告、検査等)第1項の特殊建築物定期調査報告や第3項の建築設備定期検査報告といった制度が有ります。都心部での建築士の実施率は、大臣が認めた調査員や検査員といった建築士以外の実施率に、はるかに劣っているのが実態ではないでしょうか。
マンション管理の団体や建物管理業界などでは、長期修繕計画の雛形などが作成されてきたと思います。また、事務所ビルなどに関しては、(社)建築・設備維持保全推進協会(BELCA)から、「維持保全計画の作り方」や「LC(ライフサイクルコスト)評価データ集」などが発行され、更新年数をはじめとするさまざまなデータが公開されています。しかしながら、実際の建築物の運営において、耐震改修や省エネ改修を考えれば当然とも思える、建築士その他専門技術者の関与等についての具体的な指針が作成されていることはまれでしょう。
既に始まっているストック建築物の有効活用を考えるとき、建築士は相談をされた場合に対応するといった受け身の形だけでは、社会貢献できているとは言えません。耐震改修や省エネ改修の業務知識を磨き、積極的にマンションや事務所ビルならびに商業施設などに働きかけていくことが、資格要件といった法的な支援が無くとも必要だと思います。東京建築士会ではストック委員会がリノベーションの実績のある方のヒアリングや検討会を重ね、問題点を摘出し、今後の建築士の新たな業務分野としてどうあるべきかを含めて検証し、報酬の受け方も合わせて士会会員宛に提案していくこととなっています。もちろん必要な関係法令・条例の改正などの要望も欠かすことはできません。会員各位のご意見が有れば是非お寄せ下さい。

参考通知 昭和60年3月19日建設省告示第606号
建築物の維持保全に関する準則又は計画の作成に関し必要な指針を定める件
建築基準法(昭和25年法律第201号)第8条第2項の規定に基づき、同法第12条第1項に規定する建築物の維持保全に関する準則又は計画の作成に関し必要な指針を次のように定め、公布の日から施行する。

第1 総則
1 建築基準法第12条第1項に規定する建築物(以下単に「建築物」という。)の維持保全に関する準則(以下「準則」という。)又は建築物の維持保全に関する計画(以下「計画」という。)は、建築物の敷地、構造及び建築設備を常時適法な状態に維持するため、この指針に従つて作成するものとする。
2 準則は、建築物について計画を作成する権限を有する者が複数ある場合において、計画相互の整合性を確保する必要があると認められるときに、それらの者の合意により当該建築物について作成するものとする。ただし、複数の建築物が一団地を形成している場合は、当該一団地について作成することができる。
3 計画は、建築物の維持保全を行う上で採るべき措置を定める必要があると認められる場合において、当該建築物の所有者又は管理者が当該建築物又はその部分について作成するものとする。ただし、複数の建築物が一団地を形成している場合は、当該一団地について作成することができる。
第2 準則に定めるべき事項
 準則には、第3の各号に掲げる事項のうち計画相互の整合性を確保する上で必要であると認められる事項を定めるものとする。
第3 計画に定めるべき事項
 計画には、おおむね次の各号に掲げる項目につき、それぞれ当該各号に掲げる事項を定めるものとする。
一 建築物の利用計画 建築物又はその部分の用途等、将来の増改築の予定等に関する事項
二 維持保全の実施体制 維持保全を行うための組織、維持保全業務の委託、建築士その他専門技術者の関与等に関する事項
三 維持保全の責任範囲 計画作成者の維持保全の責任範囲に関する事項
四 占有者に対する指導等 建築物の破損時等における通報、使用制限の遵守等に関する事項
五 点検 点検箇所、点検時期、点検者、点検に当たつての判断基準、結果の報告等に関する事項
六 修繕 修繕計画の作成、修繕工事の実施等に関する事項
七 図書の作成、保管等 維持保全計画書、確認通知書、竣工図、設備仕様書等の作成、保管、廃棄等に関する事項
八 資金計画 点検、修繕等の資金の確保、保険等に関する事項
九 計画の変更 計画の変更の手続等に関する事項
十 その他 前各号に掲げるもののほか、維持保全を行うため必要な事項

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